注力分野 – 夫婦関係
COLUMN 01
離婚に関するご相談
はじめに
離婚の件数は全国的に増加傾向にあります。
「離婚する」ということは、たとえ夫婦間で大きな争いになってはいないとしても、精神的には非常に大きな負担です。お互いの希望や言い分が対立しているようなときは、なおさらです。そのような状況で、当事者自身が有効な手続を選択し、お子さんに関する事項や財産に関する事項等を決めていくことは、簡単なことではありません。
離婚は、これまでの婚姻生活を清算し、その後の人生に大きな影響を与えるものですので、法律家によるサポートが非常に重要です。
弁護士に交渉や対応を任せることができます
自分だけで離婚に向けて動いていくことは、それ自体が精神的に大きな負担となるだけでなく、離婚時に決めるべきこと・決めておくべきことは多岐にわたるので、それらをすべて自分で調べて対応・解決しようとすると膨大な時間や手間がかかります。
離婚には、協議・調停・訴訟等の手続方法がありますが、弁護士は全ての手続の代理人になることができます。
弁護士に相談することで、離婚に向けてどのように動くべきか、適切な手段・方法のアドバイスを受けることができますし、弁護士に依頼することで、弁護士が窓口として相手方や裁判所等に対応しますので、精神的にも時間的にも、負担を大きく軽減することができます。
COLUMN 02
離婚手続
離婚手続には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの種類があります。各手続の特徴を踏まえて、当事者の実情に応じて適切な手続を選択する必要があります。
協議離婚
協議離婚とは、当事者間の協議(話し合い)により離婚することをいいます。
家庭裁判所の手続は不要で、市区町村の役場に離婚届を提出して受理されることにより離婚が成立します。合意さえできれば、民法で定められた離婚原因に該当しなくても離婚することができます。離婚件数全体の8割以上が協議離婚といわれています。
スムーズに協議を進めることができれば、各手続の中で最も迅速かつ柔軟に婚姻関係を解消することができます。
しかし、感情的な対立が大きい場合や夫婦の言い分に食い違いがある場合などには、かえって時間がかかることもあります。
調停離婚
調停離婚とは、当事者間の協議がまとまらない場合や協議の場を設けること自体ができない場合等に、家庭裁判所の調停手続によって離婚することをいいます。
調停では、裁判官または調停官1名と一般市民から選ばれた調停委員2名以上で構成された調停委員会が、当事者双方から事情や意見を聞いて話し合いを仲介し、協議を進めていきます。
調停委員会が法的な枠組みをベースにしながら議論を整理するので、当事者だけでは協議をすることができない場合でも話し合いを進めることが期待できます。
しかし、協議離婚と同様、離婚のためには当事者双方の合意が必要です。また、調停の期日は1~2か月に1回程度の頻度で開かれるため、調停が成立するまでに時間がかかることもあります。
審判離婚
審判離婚とは、調停が不成立になった場合に、家庭裁判所の調停に代わる審判により離婚することをいいます。
審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ、異議を申し立てると審判は無効になるため、審判離婚はほとんど利用されていません。異議申立ての可能性が低い場合、例えば養育費の金額等の離婚条件にわずかな意見の違いがあるものの当事者双方が裁判所の審判には応じると合意している場合や、離婚条件に争いはないものの病気等の理由で調停を成立させることができない場合等に利用されることがあります。
裁判離婚
裁判離婚とは、家庭裁判所に訴訟(人事訴訟)を提起し、民法770条で定められた裁判上の離婚原因を主張・立証して、裁判所の判決により離婚することをいいます。
離婚原因を立証できれば、相手方の合意がなくても離婚をすることができます。離婚原因の立証には至らない場合でも、訴訟上の和解によって離婚が成立することもあります。
しかし、調停と同様、訴訟の期日は1~2か月に1回程度の頻度で開かれるため、判決までに相当の期間がかかります。
また、法律上、原則として、離婚訴訟を提起する前に調停による解決を試みなければならないと定められています(家事事件手続法257条1項)。
COLUMN 03
離婚原因
夫婦のどちらかが離婚をしたいと考えたときに、もう一方が離婚に応じない場合、つまり協議や調停によって離婚することができない場合には、裁判手続によって離婚をする必要があります。この裁判離婚の場合、以下の民法上規定された「離婚原因」があることが必要です。
離婚原因
①不貞行為
…配偶者が不倫・浮気をした
②悪意の遺棄
…配偶者が正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を履行しない
③3年以上の生死不明
…3年以上の間、配偶者が生死不明である
④回復の見込みのない強度の精神病
…配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
性格の不一致等
一般的に、離婚を希望する理由がいわゆる性格の不一致のみであるという場合には、それだけで裁判離婚が認められることはほとんどありません。このような場合には、相手方に離婚に応じてもらうように協議や調停のなかで説得を続けるほかないという場合もあります。
しかし、弁護士が法律相談の中で離婚を希望するようになったご事情をお聞きしていくと、暴力や暴言、強いモラハラがあるとか、長期間に渡って別居しているとか、⑤に該当すると判断される、つまり裁判離婚も可能であると考えられるケースも多くみられます。
ですから、配偶者が離婚に応じてくれないという場合にも、諦めてしまうのではなく、弁護士に相談し、どのような手段を取ることが可能なのかを見極めることが重要です。
COLUMN 04
離婚のときに決める事項
離婚のときに決める事項は、主に、①子供に関する事項(親権・養育費・面会交流)、②財産に関する事項(財産分与)、③年金分割に関する事項に分けられます。また、離婚の原因によっては④慰謝料について決めることもあります。
弁護士などが関与せず、夫婦が双方「離婚届」に署名押印をして提出する協議離婚の場合には、上記①~④のうち、親権以外の事項について決めることなく離婚届を作成して提出し、離婚を成立させるケースもみられます。
しかし、離婚後になって上記①~④を話し合おうとすると、相手方が話し合いを拒むとか、場合によっては連絡が取れなくなるなどして、相当な労力を要することがあります。ですから、弁護士を使わず夫婦の話し合いで離婚するという場合であっても、離婚届を作成する前の段階で、上記の①~④のすべての事項について夫婦で話し合って決めておくことが望ましいといえるでしょう。
COLUMN 05
財産分与
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻中に取得した財産を離婚に際して分けることをいいます。婚姻中の財産の清算の側面が大きく、実務上は、夫婦いずれの名義であるかにかかわらず婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産を、2分の1ずつ分ける場合がほとんどです。
離婚に向けて話し合いを行う中で財産分与額についての協議がまとまらない場合は、離婚を求める調停・裁判等の手続の中で財産分与を求め、その解決を図ります。
離婚は成立しているが財産分与が行われていないといった場合には、財産分与のみを求めて家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いを行うこともできます。この場合、調停で解決しない場合には裁判所が審判手続によって判断することになります。なお、離婚後の財産分与請求は、離婚の時から2年以内に行う必要があるため、注意する必要があります。
COLUMN 06
親権
親権とは
親権とは、子どもの監護・養育を行ったり(身上監護)、子どもの財産を管理したり(財産管理)する権限であり義務であるとされています。親権は、子どもの利益のために行使することとされています。
父母の婚姻中は、父母双方が親権者とされており、共同して親権を行使します。
そして、父母が離婚する場合には、父母のうち一方を親権者と定めることとされています。
それでは、親権者はどのように決めるのでしょうか。
協議
親権者は、子どもが成人するまで、その日常の監護・養育や教育、医療などに関する事項(身上監護)の判断や、子どもの財産に関する事項(財産管理)の判断を行う立場です。また、一度決めた親権者を後から変更することは、手続も厳格であり実際上は簡単ではありません。
ですから、離婚後の子どもの生活はどのようになる見込みなのかをふまえて、子どもの利益にとって、父母のいずれがそのような判断を行う立場に立つのが適当なのかという観点から、離婚の際に慎重に話し合って決める必要があります。
なお、親権者が子どもを監護できないような特別な事情がある場合などには、「親権者」と、身上監護のみを行う立場である「監護権者」とを別に定めるということもあります。
親権者をいずれかとするかについて父母で合意できないときは、協議離婚をすることができません。
この場合は、家庭裁判所での調停や審判・訴訟などによって離婚をすることになりますので、親権者についてもこれらの手続の中で定めることになります。
審判・訴訟
審判・訴訟によって離婚し、その手続の中で親権者を定めるという場合、裁判所が親権者を定めることになります。
裁判所は、子の福祉にとってどちらを親権者と定めるのが適当かという観点から様々な事情を総合的に考慮し、親権者を定めることになります。
COLUMN 07
養育費
養育費とは
養育費とは子どもの両親が負担する、未成熟子の養育のための費用(生活費)のことです。子どもの両親がその経済力に応じて分担するもので、両親が離婚したとしても、未成熟子の養育費の負担はなくなりません。
具体的には、子どもと離れて暮らす親が、子どもと共に暮らし直接養育にあたっている親に対して養育費の支払義務を負うことになります。
離婚に向けて話し合いを行う中で、離婚後の養育費額等に関して協議がまとまらない場合は、離婚を求める調停・裁判等の手続きの中で養育費の支払いを求め、その解決を図ります。
離婚は成立しているが養育費が支払われないといった場合には、養育費の支払いのみを求めて家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。調停で解決しない場合は裁判所が審判により判断します。
養育費額の具体的な算定については、婚姻費用と同様に、実務上、標準算定方式・算定表が利用されており、算定表で考慮されない特別な事情については、具体的事案に即して個別に判断されます。
一般的に子どもが成人に達する20歳までの支払とすることが多く、支払義務も長期にわたるため、子どもの状況や親の経済状況などの大きな事情変更があった場合には、協議や調停・審判によって養育費額の増減の変更を求めることもあります。
COLUMN 08
面会交流
面会交流とは
面会交流とは、子と別居している親が、定期的・継続的に、子と会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙等の方法で交流することをいいます。
離婚をする際は、子の利益を最も優先して考慮して面会交流に関する事項を定めるべきとされています(民法766条1項)。
面会交流の法的性質について見解は分かれていますが、子の権利とすることはあるものの、別居親の権利とはしないのが通説・実務上の考え方と思われます。
面会交流に関する事項の決め方
一般的には、両親の話し合いにより、面会交流を実施する方法、頻度(○か月に×回等)、実施する時間、宿泊の有無、子の受け渡しの場所・方法、両親の連絡方法等を決めます。法務省のホームページで面会交流に関する取り決めを含む「子どもの養育に関する合意書」のひな形と記載例が公開されています。
当事者間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。面会交流調停は、離婚前の別居中でも離婚後でも申し立てることができます。調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続に移行します。
調停や審判で決められた面会交流が実施されない場合、面会交流を直接的に強制することはできません。しかし、面会交流の日時や頻度、実施時間の長さ、子の受け渡しの場所・方法等が具体的に定められている等、監護親がすべきことが十分特定できているといえるときは、間接強制(相手方に間接強制金を課すことで心理的圧迫を加え、自発的な義務履行を促すこと)を申し立てることができます。
もっとも、全ての事案で間接強制を前提に調停や審判の条項が決められているわけではありません。面会交流は、長期的・定期的に実施されることが予定されていますので、当事者間に一定の信頼関係がある場合は、面会交流を両当事者の協力のもと柔軟に実施できるように具体的な方法等を定めず都度協議して実施していくことが望ましいこともあります。
当事者や子の状況に応じて、長期的な視野で、面会交流に関して定める内容や具体性の程度を検討する必要があります。
COLUMN 09
婚姻費用
婚姻費用とは
「離婚の準備等のために別居したものの、相手方から生活費を受け取ることができず、暮らしていくことができない」という相談は少なくありません。
そのようなときは、「婚姻費用分担請求」をご検討ください。
婚姻費用とは、夫婦が通常の社会生活を維持するために必要な費用のことです。夫婦には、婚姻費用を互いに分担する法律上の義務があります(民法760条)。婚姻費用分担義務は、事実婚(内縁)関係の夫婦間にも存在します。
婚姻費用の具体的な金額は、夫婦の協議によって決めることができますが、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。調停でも決まらない場合は、裁判所が審判により金額を決定します。
婚姻費用分担額の算定方法
裁判所による婚姻費用分担額算定では、統計資料等に基づいて作成された標準算定方式・算定表が活用されています。最新の算定表は裁判所のホームページで公表されているので、専門的な知識がなくても金額の目安を知ることができます。
算定表をベースに婚姻費用を算定する場合でも、事案ごとに様々な事情を考慮して金額を調整します。また、夫婦がそれぞれ別の子を監護養育しているケースや子の人数が多いケース等、夫婦の実情が算定表の条件外または範囲外である場合もあります。
妥当な婚姻費用分担額が分からずお悩みのときは、弁護士にご相談ください。
婚姻費用分担義務の発生基準時
婚姻費用分担義務は、婚姻関係により当然に発生する義務ですので、理論的には同居中にも発生しています。しかし、夫婦関係が順調である間は、生活費等について明確ではないとしても何らかのルールや暗黙の了解があることが多いので、婚姻費用が争いになるのは、通常、別居後です。
裁判所は、相手方に対し分担請求をした後に発生する婚姻費用のみの分担義務を認めることが一般的です。別居後に配偶者から婚姻費用を受け取っていない場合、できるだけ早く婚姻費用分担請求をすべきといえます。
なお、分担義務の終期は、通常、「同居又は離婚するまで」と定めます。
婚姻費用分担請求が制限される場合
婚姻関係が事実上破綻していても、法的に離婚していない場合には、婚姻費用分担義務は消滅しません。
しかし、不貞発覚を理由に別居したにもかかわらず不貞をした側が請求する場合等、別居開始や婚姻関係破綻の責任が専らまたは主として請求者側のみにある場合(有責配偶者による婚姻費用分担請求)には、請求が認められなかったり減額されたりすることがあります。
COLUMN 10
離婚が成立したあとの手続
離婚が成立した場合、離婚届の手続と戸籍に関する各種の手続を行う必要があります。
離婚届の提出
協議離婚に限らず、調停離婚、審判離婚、裁判離婚であっても、離婚届の提出が必要です。これを怠ると届出義務違反によって過料の制裁を受ける場合があります。調停離婚・審判離婚・裁判離婚の場合の届出義務者は基本的に申立人(原告)側です。
届出は、離婚成立の日(協議離婚の場合は協議離婚日、調停離婚の場合は調停成立日、審判離婚及び裁判離婚の場合は審判・裁判の確定した日)から10日以内に、夫婦の本籍地又は届出人の住所地の市区町村等に離婚届及び調停調書等の必要書類を提出して行います。
なお、協議離婚の場合、離婚届に夫婦双方の署名及び証人の署名等が必要ですが、調停離婚・審判離婚・裁判離婚の場合には、届出を行う者以外の者の署名は不要です。
届出人の住所地での届出を行う場合には、届出の際に戸籍謄本を提出する必要があるので、届出前に取得して準備しておくとよいでしょう。
離婚後の戸籍の手続
日本人同士が婚姻する際には、夫および妻は、どちらか一方の氏(姓)を選択して同じ氏(姓)を名乗り、夫婦の戸籍が作られます。婚姻の際に氏(姓)の変更がなかった側がこの「夫婦の戸籍」の筆頭者になっており、夫婦と婚姻前の子で構成されているのが一般的です。
このため、離婚が成立した場合、婚姻の際に氏(姓)の変更を行った側は、以下の戸籍に関する各種手続を行う必要があります。
これに対して、婚姻の際に氏(姓)の変更がなかった側は、戸籍に関する手続は不要です。
離婚による氏・戸籍の変動
婚姻の際に氏(姓)を変更した者は、離婚により「夫婦の戸籍」から婚姻前の戸籍に復するのが原則とされています。
このため、もし、離婚後も婚姻中に称していた氏(姓)をそのまま称することを希望する場合には、離婚から3か月以内に、本籍地のある市区町村役場に「婚氏続称」の届出をする必要があります。この届出を行うことによって、離婚の際に称していた氏(姓)による新戸籍が作られます。
離婚の届出とともにこの婚氏続称の届出をすることもよくありますが、一度婚氏続称の届出をしてしまうと、その後になって婚姻前の氏を称したいと思っても、家庭裁判所に「氏の変更許可」の審判を申し立てる必要があるうえ、裁判所が「やむを得ない事由がある」と認めないと許可されません。ですから、離婚に際して婚氏続称をするかどうかについては、慎重に考えて決めた方がよいでしょう。
なお、婚氏続称はしない(婚姻前の氏を称する)ものの、婚姻前の戸籍に戻るのではなく、新たに自分を筆頭者とする戸籍を作ることを希望する場合には、離婚届と同時に「新戸籍編製の届出」をする必要があります。これによって、婚姻前の氏(姓)による新たな戸籍が作られることになります。
子の氏及び戸籍の変更の手続
以上によって、夫婦のうち、婚姻の際に氏(姓)を変更した側が夫婦の戸籍から離れる手続が完了することになります。
しかし、夫婦の間に婚姻前の子がいる場合には、子についても氏・戸籍の手続を行う必要がある場合もあります。
例えば、婚姻の際に氏を変更した妻(母)が子の親権者に指定された場合、離婚届を提出しても、子の戸籍は夫を筆頭者とする元々の夫婦の戸籍に残ったままになります。
このため、母と子の戸籍(氏・姓)を一緒にしたい場合には、母の新戸籍が編製された後、子の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、「子の氏の変更許可の審判」を申し立てる必要があります。
家庭裁判所の審判自体はさほど時間がかからず出るのが一般的ですので、審判が出たら、審判書謄本と必要書類をそろえて、本籍地または住所地の市区町村役場で「入籍届」を提出します。
子の氏の変更許可の審判申立てには期限はありません。ただし、市区町村によっては審判後入籍届までに長期間を要した場合にはその理由を求める場合もありますので、審判が出たら早めに入籍届を提出するのが望ましいでしょう。